亘理町で暮らし始めて注意を向けるようになったことの一つは、1日のうちで目まぐるしく変わる空の表情だった。朝に晴れていた空が、昼には山側から流れてきた雲に覆われ、夕方になると再び晴れ間が戻り、美しい夕日が沈んでいく。雲の形も様々で、鱗雲や積乱雲、どこまでも薄く伸びる膜のような雲など、毎日多様な表情を見せている。
この大きく開けた空を眺めるうちに、天気を別の方法でも感じてみたいと思い、天候の変化を視覚化する装置として「ストームグラス(天気管)」を制作した。ストームグラスとは、19世紀ヨーロッパで天気予報用に用いられた器具で、ガラス管の中に入った液体が周囲の環境変化に応じて状態を変えることで、天候の傾向を示すとされている。結晶が現れたり沈んだりする様子は、かつて船乗りたちが天候を読む手がかりだったそうが、その科学的な原理はいまだ完全には解明されておらず、主に温度変化に反応して結晶が形成・溶解することが知られている。
制作の過程で、内部に加える物質の種類や形状によって結晶構造に変化が現れることに気づき、阿武隈川河口で採取した砂鉄を入れたオリジナルの装置として仕上げ、部屋に飾っている。毎朝結晶の様子を観察することは小さな楽しみであり、偏頭痛持ちの私にとっては、その日の体調や機嫌を予測する手がかりにもなっている。日々変わる空と結晶の変化は、見えないものの揺らぎを視るための装置として、私の生活と感覚を結びつけるひとつの媒介となっている。
機嫌を視る