「鳥の海」という地名がある通り、亘理町は古来より多くの鳥類と人間が共生してきた土地だ。潮が引くと黒々とした干潟が広がる鳥の海は、海水と淡水が混じり合う汽水域を形成し、鳥たちにとって豊富な餌場を提供する。さらに広大な仙台平野の一角を占める亘理は豊かな田畑が広がり、鳥たちが暮らす絶好の環境を形作っている。
亘理で暮らす鳥たちの中でも特に印象的なのは、シラサギやアオサギの姿だ。彼らは春から夏にかけての稲作の季節に現れる渡り鳥で、近年では亘理神社の鎮守の森に「コロニー(繁殖群)」を形成する。木の枝々を埋め尽くす白い影は、どこか不気味でありながら幻想的でもあり亘理らしい光景として心を震わせるが、騒音や糞害といった現実的な課題にもなっているため、人間との適切な距離感が模索されている。人間の生産活動である稲作や耕地開発による自然環境の変化に適応して姿をみせるサギ。双方が環境を共にする境界線を、今まさに探っているのかもしれない。
そんな折、3Dプリンターを用いてものづくりをするようになり面白い機能を見つけた。ソフトクリームのようにぐるぐると樹脂を巻き上げて立体造形する3Dプリンターでは、空中に浮いてしまう形はうまく印刷できない。そのため後から切り取る前提で支えを自動で作ってくれる「サポート生成機能」が搭載されている。サポートの構造体は樹脂の節約のために、力学的に効率の良い木のような形になっている。瞬時に生成されるツリー構造を見た時、あのサギたちが集まりたい場所に自動で木が形成され、自由にコロニーを作ることができるイメージが湧いてきた。人間が住みやすいように地球を改変するように、私が3Dプリンターで自由に造形を楽しむように、サギが地球を改変する世界があるかもしれない と夢想しながら。
サギのコロニー